「コン平」第0回に行ってきた

 
 

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 今、概念がアツい!ということで映像作家・大月荘とChim↑Pomが発足した「コンセプトシートワークショップ コン平」の第0回に行ってきた。



コン平 http://public-image.org/3d/?p=1067


 出演者は主催者の大月荘・Chim↑Pomに、コンセプトガールのまこぷり、ゲストに映像作家の菅原そうたと美術家の会田誠、ライブパフォーマンスに地下アイドルのフルーツ☆パンチを迎え、いあわせた無人島プロダクションと青山|目黒のギャラリストふたりと作家の加藤翼が飛び入り参加するというにぎやかな顔ぶれ。


 オープニングのDJセットはChim↑Pomの林靖高、かつてのラップユニット・DJ COMPLEXではTSUTAYAで借りてきた浜崎あゆみのベスト盤などを再生するスマートなプレイで魅せてくれたが、今回はiPhoneのファイルを再生するだけというさらなる進化を遂げていた。


 そんなまったりすぎるDJを終え、ギャラリストのヨシイヒロミによるメッセージビデオを勝手にSFX風にアレンジした映像で幕をあけ、ホストとゲストたちの考案したコンセプトシートに次々と寸評が加えられていく。いくつか例をあげると


「地球上の核弾頭をすべて太陽に撃ち込む」
「水素原子に(「バカ」と)らくがき」
「すべての↓概念を↑概念にする」


などなど、まじめに考え始めると言葉の尽きないおもしろいコンセプトが出てきたけれど、なかでも詳しく書き残しておきたいと思ったのが会田誠のコンセプトシートのひとつ


「第四回横浜トリエンナーレは俺が仕切る」


 これはその場かぎりのネタではなく、USTREAMを見ているであろう美術関係者に向けて、実際のキュレーション案として「コン平」の場を借りて提案されたもの。アイデアをまとめると以下のとおり、


インドにある「船の墓場」で廃棄寸前のタンカーを安く見繕ってチャーターする
 ↓
アジアやアフリカの各地域に寄航しながらアーチスト(っぽい、よくわかんない人)をどんどん乗せていく
 ↓
船の中でなにか作ってもらいながら世界一周して横浜に停泊
 ↓
横浜トリエンナーレで作品を展示し、再びタンカーで各地に戻っていく


 船だし、港だし、国際だし、横浜トリエンナーレにはばっちりだ。もともと横浜トリエンナーレというのは、国内と国外のインタフェースとしての港街という、新しい時代への想像力を日本に育ませることになった横浜の歴史的役割を意識しての国際展だ。しかし、空路と情報回線を通じて西洋のトレンドとコンテクストを高額で輸入するものに陥っているともよく批判されている。


 たぶん誰がわるいというわけでもないけれど、横浜にかぎらずアートや文化を扱う大型の地域活性プロジェクト全般(いわゆる「クリエイティブ」政策)は、地域リソースの再発見と活性化(欧州型、C・ランドリーの創造都市論モデル)という名目が、エリート・ビッグネームの招待(北米型、R・フロリダの創造階級論モデル)という実態に陥りやすい。


 グローバルな文化政策は、資本・情報・人脈・キャリア・ノウハウ・モビリティといった各種リソースの西/東間または北/南間の偏った配分を、グローバルに悪化させてしまう。その小規模な例を、日本の都市/地方間または都心/郊外間で見ることもできる。


 そこにきてこの「俺が仕切る」案は、そうしたアートの無自覚な政治性へのまじめな(そして、おそらくはまじめすぎて、あからさまに表現するには疎ましがられるだろう)問題意識を、とても単純でわかりやすいスペクタクルのなかにそっと潜みこませる妙案だと思う。


 船の墓場というグローバルなヴァリューチェーンの最下流からゆっくりと逆行しながら横浜に向かってくる船、次々と乗船してくるよくわかんないけどクリティブなやつら、そんな船旅のなかではたしてどんな価値が創造されるのか、考えただけでもおもしろい。


 これを考えるだけで終わらせず、このプランのポテンシャルが十分に理解され、安全や出入国の管理といった運営的な課題を解決し、どう考えてもトラブル続きになるであろうこのプロジェクトを最後までマネジメントできたら、世界中が「日本すげー」だろう。横浜トリエンナーレにはぜひそれくらいすごいことやってほしい。



 第0回はUSTREAMのライブ放送だったけれど、次回からは学生など一般の参加者とともにコンセプトシートを作成するワークショップイベントになる。きたる第一回は7月17日で、池尻大橋の3D PUBLIC/IMAGEにて全10回の開催予定とのこと。



PUBLIC/IMAGE 3D http://public-image.org/3d/?p=1067